アレルギー性鼻炎には、薬物療法(対症療法)以外に舌下免疫療法(アレルゲン免疫療法)という選択肢も
当ホームページの「鼻の疾患についてのお話」でも過去に触れていますが、特に重症のアレルギー性鼻炎(ダニ、スギ)の患者さんに対しましては、舌下免疫療法(アレルゲン免疫療法)という治療方法があります。
薬物療法(対症療法)と舌下免疫療法(アレルゲン免疫療法)の違い
薬物療法(対症療法)は、症状を起こす物質(ヒスタミンなど)の働きや鼻の中の炎症をおさえて症状を和らげます。アレルゲン免疫療法は、からだをアレルゲンに慣らして症状を和らげたい、根本的な体質改善が期待できる治療法です。スギ花粉症の場合はスギ花粉を、ダニアレルギー性鼻炎ではダニのアレルゲンを含む治療薬を用います。
開始時期は
スギ花粉症の場合は、スギ花粉が飛んでいる時期は治療を新たに開始することはできません。スギ花粉症の「アレルゲン」は「スギ花粉」であり、スギ花粉が飛んでいる時期はアレルゲンに対する体の反応性が過敏になっています。そのため、スギ花粉が飛んでいない時期に治療を開始します。当院では、基本的に6月から治療を開始しています。一方、ダニアレルギー性鼻炎の場合は時期に関わらず治療は始められます。
治療の期間と効果が現れる時期は
少しずつアレルゲン(スギ花粉やダニ)を投与し、からだをアレルゲン(スギ花粉やダニ)に慣らすことからはじめ、数年にわたり継続して服用します(3年以上を推奨)。そのため、当院では基本的に1ヶ月に1度の定期的な受診をお願いしています。
正しく治療が行われると、スギ花粉症の場合は初めてのスギ花粉飛散シーズンから、ダニアレルギー性鼻炎の場合は治療を始めて数ヶ月後から効果が期待され、年単位で継続することで最大の効果が得られると考えられています。長期間、正しく治療が行われると、アレルギー症状をほぼ完全に改善したり、治療終了後も長期にわたり症状をおさえることができます。または症状が完全におさえられない場合でも、症状をやわらげ、おくすりの使用量を減らすことも期待できます。
気をつけていただくことは
アレルゲンを投与することから、服用後にアレルギー反応がおこるおそれがあります。まれに重篤な場合ではアナフィラキシーショックとよばれるような強いアレルギー反応を生じる可能性があります。ただし、これまでの海外・国内での実績では、これまでの皮下免疫療法によるものに比べるとかなり安全とされており、舌下免疫療法ではアナフィラキシーショックは投与10万回に1回と報告されています。
治療開始年齢は
小児の患者さんも治療ができるようになり、5〜65歳の方が対象です。
治療は長期になりますが、根本的治療に近い方法で、効果もかなり確実です。興味のある方は、相談していただければと思います。詳しく説明させていただきます。よろしくお願いします。