慢性中耳炎とは
慢性中耳炎は中耳の感染が長期化した状態をいい、大きく二種類に分けられます。一つは、慢性単純性中耳炎で、鼓膜の中央部に穿孔(穴が開いた状態)があり、中耳腔の粘膜に炎症を起こします。もう一つは、真珠腫性中耳炎で、鼓膜の上方(鼓膜弛緩部)や辺縁(緊張部辺縁)に穿孔があり、中耳腔のまわりの骨を破壊して病気が進行するため、大きな合併症を起こす危険性があります。
症状は?
鼓膜に穿孔があってもまったく症状がなく、普通に生活を送っている方もおられます。しかし、一般に慢性中耳炎の方では、鼻やのどの感染の後や、入浴や水泳の際に耳に水が入った後などに耳漏れが出てきます。もちろん、鼓膜に穴が開いていることや耳漏れにより、難聴を認めます。
多くの場合、痛みはありませんが、症状が続くと炎症組織が増殖してきます(これを肉芽と言います)。その結果、外耳から内耳へ音を伝える役目をしている耳小骨の動きが悪くなったり、耳小骨の一部が破壊されたりして、伝音性難聴が生じます。さらに症状が進行すると、内耳の神経が障害され、耳鳴り、めまいなどが起こることがあります。
検査は?
- 鼓膜の検査
当院では鼓膜鏡や中耳ファイバーを使用し、鼓膜所見を十分に観察します。さらに、患者さん自身に中耳の状態をモニターテレビでお見せすることにより、病状をしっかり理解していただきながら、治療を行っています。 - 細菌検査
長期に感染を繰り返している場合、ペニシリン耐性肺炎球菌、緑膿菌やメシシリン耐性黄色ぶどう球菌などの多くの抗生物質に抵抗性のある細菌が検出されることがあります。炎症の原因菌を知ることは治療の上で重要です。 - 聴力検査
・純音聴力検査
聞こえの検査です。難聴の有無、程度、伝音性難聴か感音性難聴かを判定します。
・パッチテスト
人工の膜を利用し、一時的に鼓膜穿孔を閉鎖し、聴力の改善の有無を検査します。
これにより聴力が改善すれば、中耳腔の耳小骨の動きや連鎖は正常です。 - CT検査
他院に依頼しての検査となりますが、手術の必要性の有無、術式の判断に必要です。中耳腔における炎症の広がり、耳小骨(ツチ骨、キヌタ骨、アブミ骨)の形態、鼓膜閉鎖後に中耳腔の換気に関与する耳管の形態を確認します。
慢性中耳炎の治療
まず、耳漏が停止した状態(乾燥耳)を目標とします。局所の清掃処置や点耳薬、内服療法などにより、炎症をコントロールします。多くの場合、これらの治療により耳漏は一旦停まります。しかし、鼓膜に穿孔があるかぎり耳漏を繰り返すことが多いため、完全に耳漏れを停めるためには鼓膜の閉鎖や中耳腔の肉芽の清掃が必要です。さらに耳小骨に病変があるかぎり聴力は改善しないので、耳小骨を再建しなければなりません。これらの治療には手術が必要となります。
手術的治療について
従来、慢性中耳炎の手術は入院期間が長く、また耳漏の停止率や聴力の改善率も良好とは言えませんでした。最近では、日帰り手術から、長くても一週間程度の入院が中心で、耳漏停止や聴力改善などの手術成績も飛躍的に改善しています。
さらには岩野耳鼻咽喉科サージセンターでは、一泊二日というたいへん短い入院期間で、鼓室形成術を行っています。(岩野耳鼻咽喉科サージセンターHP「手術の紹介」) したがって、当院では、手術適応のある慢性中耳炎の患者さんには積極的に手術をすすめています。
手術費用について
保険点数 | 3割負担の場合 | |
鼓膜穿孔閉鎖術 | 1,580点 | 4,740円 |
鼓膜形成術 | 18,100点 | 54,300円 |
病状により上記の手術を選択しますので、費用は異なります。これに術前の検査料、再診療、術後服用していただく薬剤の費用が加わります。