日本耳鼻咽喉科学会総会に関しては、過去に当ホームページでも、書かせていただいております。昨年は、コロナ禍で延期になりましたが、先日、久しぶりに出席することができました。この日本耳鼻咽喉科学会総会は、耳鼻咽喉科では日本最大の学会で、毎年、多数の耳鼻科医が参加されます。残念ながら、今年の会場は緊急事態宣言が発令されている国立京都国際会館です。当然、リアルタイムのライブ配信や学会終了後に配信されるオンデマンド配信も多数用意されており、自宅での視聴も可能でした。しかし、今回は木曜日の休診日を利用して、あえて出席してきました。この学会には、多数の医療器械メーカーが、耳鼻科外来診療に必要な最新の器械を展示しています。現在、購入を検討している医療器械があり、こればっかりは実際に手に触れないと決断できないと考えたからです。
もう一つの大きな理由は、iPS細胞の開発で高名な山中伸弥先生の特別講演があったことです。今回の学会には、他にも同じくノーベル医学生理学賞受賞者である本庶佑先生、昨年のコロナ禍の中、7割おじさんとして有名になった西浦博先生の講演も予定されており、さすが京都大学主催といった豪華なラインナップでした。山中伸弥先生は高校の後輩であり、奥様が大学の同級生であることから、勝手に親近感を持っています。ノーベル賞を受賞される前から、何回か講演を聴いているのですが、今回もせっかくの機会なので出席させていただきました。
国立京都国際会館はiPS細胞研究所から数㎞しか離れておらず、学会会場で直接、講演を聴けるものと思い込んでいましたが、残念ながらオンラインによる講演でした。これも、このご時世だから仕方がないなと思ってしまいました。一方、講演内容はすばらしく、iPS細胞研究の背景、現在の状況、将来の展望など、大きな感銘を受けました。
今回の学会場の感染対策はびっくりするくらいに厳重なもので、三密になりようがないくらいに出席者が少なく、会場はガラガラでした。口演の演者4人と座長2人がすべて、オンラインでの出席といったシンポジウムもありました。このように、これまでとは大きく様変わりした、なんとも不思議な雰囲気の学会会場でした。僕たちは、感染者が多い近畿地方に居住しているので、近畿圏内の移動には大きな抵抗がなく、今回、学会に出席させていただきました。一方、感染者の少ない日本海側や東北地方の県では、病院勤務の医師はたとえ重要な学会活動でも、県外に出ることを禁止されているという話も聞きます。考えてみたら、このような学会の運営形態は、コロナ禍の現状では当然のことなのかもしれません。
日本医師会会長が国会議員の後援会会長であることから、後援会のパーティーに出席されました。パーティーは大きな会場で100人程度の出席者で行われ、他はオンデマンドによるものだったとお聞きしています。その結果、ワイドショーに取り上げられ、大きな非難を受けました。今回の学会も同じような運営形態と思われましたが、確かに万が一、今回の会場で大規模なクラスターが発生したら、大騒ぎになるでしょう。自分としては、今回の学会は重要な所用と判断して、出席しました。しかし、このような会合の出席の是非についての線引きは、本当に難しいものだと、改めて考えさせられました。
毎回、書いていることですが、このような学会で見聞きしたことは、大きな刺激となります。このような状況ではありましたが、今回は、幸い学会に出席することができました。ありふれた言い回しですが、今回、勉強したことを今後の日常診療に生かしていきたいと考えています。