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Medical care診療内容

認知症と聞こえの悪さの関係 -補聴器の必要性について-

耳の疾患についてのお話

近年、認知症の発症、あるいは増悪を考える上で、加齢に伴う難聴が重要であることがよく言われるようになってきました。老人性難聴については、2017年12月にもこのホームページで詳しく書かせていただいています。

最近の国内外の研究によって、聞こえが悪くなって、音の刺激や脳に伝えられる情報量が少ない状態になってしまうと、脳の萎縮や、神経細胞の弱まりが進み、それが認知症の発症に大きく影響することが明らかになっています。さらに2017年、著名な医学学会誌で「認知症発症には、修正可能な9つの危険因子がある。難聴は高血圧、肥満、糖尿病などこれらの危険因子の中で、最も大きな危険因子である」という指摘がなされたのです。このことは、我々耳鼻科医にとっても大きな衝撃でした。

さらに、加齢に伴う難聴のためにコミュニケーションがうまくいかなくなると、人との会話も避けるようになり、外に出ることもなく、家にこもることになりがちです。そうすると、次第に抑うつ状態に陥ったり、社会的に孤立してしまう危険もあります。このような状態もまた、認知症の危険因子として考えられています。だからこそ、難聴が認知症発症の最大の要因と考えられているのです。

残念ながら、いったん発症した加齢性難聴を改善する治療法というのはありません。ということから、認知症発症を防ぐには、難聴発症に対する早めの対応が必要になります。動脈硬化を初めとする血管障害は難聴発症の原因になります。そのため、糖尿病、脂質異常、高血圧などの動脈硬化の原因になる生活習慣病の治療に関しては、積極的に取り組むことが重要です。

また、最近は補聴器をできるだけ早く使うことが認知症発症の予防になると考えられています。というのも、加齢性難聴は音を感じるセンサーの能力自体が弱っています。このことから、補聴器をつけるということは、単に耳に届く音を大きくするためだけではなく、脳をトレーニングして、聞こえを補うためと考えられます。その意味で補聴器使用は脳のリハビリになるとも考えられています。

補聴器は高価なもので、購入に際してはどうしても、ためらいがちになります。当院では、予約で補聴器外来を行っています。専門の業者に来てもらい、言葉の聞き取り等、詳しい検査を行って、補聴器のフィッティングを行っています。実際の購入に際しては、貸し出しを行い、1週間程度実際に使用した上で、最終に決めていただいています。

補聴器をつけることに抵抗を感じる人がいるかもしれません。「補聴器が無くても、どうにかなる」とか「年寄りじみて嫌だ」とか言うお話しもよく聞きます。しかし、これまで書いてきたように「よい聞こえ」を取り戻すことは、QOL(Quality of life=生活の質)を高めるだけでなく、認知症を予防することにもつながります。当院では、補聴器をいつまでも若々しく健康的でいるためのいわばアンチエイジングツールと考え、積極的な使用をお勧めします。