これまで、当院ではスギ花粉症に対し、薬物療法やアルゴンプラズマによる下甲介粘膜焼灼術などを行ってきました。しかし、いずれも症状をやわらげる対症療法の域を出ませんでした。
最近になり、スギ花粉症の舌下免疫療法というのが、話題にのぼるようになりました。この治療は免疫療法として、これまでにも行われてきた減感作療法の一種です。減感作療法そのものは、30年以上前からあり、根治的治療として積極的に行われた時期もありました。しかし、体質改善のために通院と注射を週1回行い、2年以上もの時間が必要でした。治療には根気がいることから、徐々に行う施設が少なくなり、当院でもこの治療は行ってきませんでした。
この欠点を補うものとして登場してきたのが、この舌下免疫療法です。この治療は、注射ではなく、スギ花粉(抗体)のエキスを舌下から患者のからだに吸収させます。パン片を舌下に置いて、そのパン片にスギ花粉のエキスを垂らし、2分間じっと待った後、飲み込んでしまうという治療です。投与は、1日1回でよく、何より治療は自宅で行えます。開始の3週間程度は連続して投与し、それ以降は週に1~2回の投与と間隔を開けていき、通院は1カ月に1回程度で行っているようです。
治療効果は、薬を飲むのと同程度以上の効果があり、根治は10~20%程度、多少は症状があったがとても良かったという人が20~30%、効いたと思うという人が20?30%で全体の70~80%の人に有効というデーターが出ています。安全性も従来の減感作療法より高いとされています。
現在は、まだ保険適応は無く、全国でも限られた施設でしか行われていません。しかし、保険適応が今秋にも認められるとの動きがあり、9月に福井市で行われる日本鼻科学会でも「舌下免疫療法の実際と対応」という教育セミナーが行われます。
当院でも、この治療法に注目しており、今後導入も検討していきたいと考えています。