先日NHKの「ためしてガッテン」で耳管開放症の事が、大きく取り上げられました。耳づまりという症状に関しては、このホームページでも、2006年の5月にくわしく掲載しました。その際にも書いているように、耳づまり(耳閉塞感)の原因は、本当に様々です。このように、テレビ番組で大きく報道されると影響は大きく、自分に同様の症状があると、取り上げられた病気に違いないと決めつけて、受診される患者さんが多く来られます。
そもそも耳管とは
耳管とは、耳と鼻をつなぐ管のことで、成人で約3.5センチあります。この耳管は普段、閉じていますが、ツバを飲み込んだり、アクビをしたりすると開いて、鼓膜の外側と内側の気圧のバランスをとっています。
耳管開放症を簡単に言うと
耳管が開放されたままの状態になり、気圧の平衡がうまくとれなくなり、耳閉感(耳が詰まった感じ)や自声強聴(自分の声が大きく聞こえる)、自分の呼吸音が耳で聞こえるなどの症状が出ます。これらの症状は、前かがみや横になると軽減するという特徴があります。
原因は
体重減少、妊娠や経口ピル、ストレス、中耳炎、運動、放射線照射、顎関節症、脱水、睡眠不足、特発的なものなど、さまざまです。
診断は
鼓膜そのものは正常のことが多いので「問題なし」と診断されがちです。したがって、上記の症状に関しての、問診が大変重要になります。さらに、呼吸に一致して鼓膜が動くこと、つばをのみ込む動作に一致して鼓膜が動くことなどが、診断の大きな助けになります。
治療は
治療方針は大きく分けて保存的治療と外科的治療に分かれます。軽度のものは自然の経過で改善することもあります。加味帰脾湯という漢方薬などの内服療法や食塩水の点鼻療法も良く行われます。耳管の鼻側の開口部に薬液(当院ではルゴールの希釈液など)を噴霧して耳管に炎症を起こし、粘膜腫脹により耳管を狭くするといった方法も行われます。症状が強ければ、もっと積極的な手術的治療(経鼓膜チューブ留置、耳管ピン、耳管咽頭口に組織充填)も行われます。反対に言うと、絶対的な治療法が確立されていないのが現状です。
当院の方針は
テレビの番組でも述べられていましたが、頻度が多いわりには、まだまだ認知度の低い疾患です。しかし、原因も症状の程度も様々ですので、治療方針も本当に様々です。ストレスや自律神経の調節障害が引き金になっている例が多く、妊娠されている方や体重減少が原因の方などには、特に治療を行わず、経過をみることがあります。軽症例では、漢方薬が奏功することが多い印象ですが、検査と手術を目的に積極的に他院を紹介することもあります。
最後に
どうしても、テレビ番組では少々誇張して、取りあげてしまう傾向があります。耳管開放症になると、簡単に真珠腫という恐ろしい病気になるというような印象を与えるような番組作りでした。ことに、この耳管開放症に関しては、耳鼻科専門医を受診して、原因をはっきりさせて治療方針を決めてもらうことが大切かと思います。