本来、鼓膜の内側と外側の気圧の調節は、鼻から耳とつながった「耳管」という管で行います。この管はふだん閉じており、ものを飲み込んだり、しゃべったりすると開いて、鼓膜の内側と外側の気圧の調節を、特に意識することなく自然に行っています。このため、日常生活では特に耳がつまる感じを意識することはありません。
夏休みには飛行機に乗って旅行に行かれた方も多いと思います。飛行機に乗ることによる耳の障害は、特に離陸する時と着陸する時に、高度の上昇・下降に伴い、中耳と外耳(鼓膜の向こう側が中耳、鼓膜の手前が外耳)の間に圧の格差が生じて起こります。つまり、この圧の変化によって鼓膜が急激に引っぱられ(手前の方にも、奥の方にも)、痛みを感じるのです。
また、夏は、マリンスポーツの機会も多いでしょう。飛行機と同様に、潜水する時も周囲の環境すなわち水圧が非常に変わります。潜って入っていく時と上る時に気圧が激しく変化し、耳の障害が起こります。
このように、夏休みは、圧変化に伴う中耳の病気で当院を受診する方が増える時期です。ことに最近は、スキューバダイビングをされる患者さんの受診が増加しています。
予防としては、耳管の働きを良くするために、鼻の症状をコントロールすることが中心となります。しかし残念ながら、耳管機能の面から根本的にスキューバダイビングが向かない方もいらっしゃいます。
過去に、飛行機やダイビングで耳にトラブルが起きた経験のある方は、あらかじめ耳鼻咽喉科を受診されることをおすすめします。内服や点鼻療法によって、そうした症状を防止したり、軽減することが可能です。
海外旅行やダイビングは本当に楽しいイベントです。耳のトラブルでせっかくの体験が悲しい思い出にならないようにしたいものですね。
○実際に飛行機に乗って、耳がふさがれた感じがしたり、耳が痛くなった時は、
*水を何回かに分けて飲んでみる(飴をなめる、ガムを噛むなども効果的)
*唾を繰り返し飲み込む
*あくびをする
○それでも、ダメな場合は、
*強すぎない程度に鼻をかむ
*鼻をつまんで口を閉じたまま、鼻の中に息を送り込む
(バルサルバ法といい、スキューバダイビングの時にも有用)
などの方法があります。
○耳のトラブルに関するJALのHPです。参考になればと思います。
http://www.jal.co.jp/health/before/symptoms.html
○ダイビングによる耳の障害の対処方法については、難しい問題が多くあります。
少々詳しすぎるかもしれませんが、下記のHPを参考にしてみてください。
http://sunahama.jp/miminuki/