開業以前に勤務していた宮古島でのエピソードです。
宮古の人の酒好きは全国的にも有名で、人口あたりの飲み屋の数は日本一という話があるほど。酒の上でのケンカや事故などトラブルも多いようです。
~~耳がなくなった話と つながった話~~
「耳から血が出た」という患者さんが来られたときのこと。耳かきで傷でもつけたかなと思いながら見ると、診察椅子には一見ごく普通の初老の男性。ただ普通と違ったのは、左の耳の下が3分の1ほどなかったことです。
患者さんの話はこうです。前の晩友人と酒を飲み、しこたま酔って家へ帰り、朝起きたら布団に血がついていた。不思議に思って鏡を見たら、耳の一部がなくなっていたというのです。前夜一緒に飲んだ友人は酔っぱらうと人の耳を噛むクセがあり、どうやら勢いあまって噛み切ってしまったようです。
「なんとかなりませんか?」と言われましたが、噛み切られた断片もないので何ともしようがありません。あとで聞くと、この耳噛み男は同様の余罪があるそうです。いやはや。。。
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ある朝、救急外来からバイクの転倒事故との連絡が入りました。駆けつけてみると、部屋全体に泡盛独特の酒臭いニオイがただよっています。患者さんは耳たぶに大きな裂傷が数カ所あり、ぶらぶらと垂れ下がり、原形をとどめない状態です。後輩医師が何時間もかけて100カ所近く縫合し、なんと奇跡的にほぼ元通りの形になりました。
しかし、朝っぱらからよく酒を飲むよな、なんて思っていたのですが、よくよく聞けばこの男性、前の日の9時から飲み続けて朝7時になり、バイクで家へ帰る途中の事故だったとのこと。宮古の飲酒運転の事故は朝方が多いらしく、その酒量には驚きです。
そろそろ暖かくなり、宮古の美しい海が懐かしくなってきました。今年あたりはぶらっと訪れてみようかなどと考えています。