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等身大の英雄

事務長の部屋

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日、家でテレビを見ていますと登山ブームの話題が取り上げられていました。中高年者の方や、若い女性を中心としたブームのようですが、なかでも「山ガール」と呼ばれる若い女性の登山者達の存在が目立っているようです。山ガールとは、アウトドア系ブランドのウェアやアイテムで身を包んだ若い女性登山者達の事で、多くの山ガールは富士山の山頂に登ることを登山の目標としているそうです。日本一高いところを目標にしているわけですから、是非がんばって目標を達成していただきたいものです。

さて、この日本には著名な登山家や冒険家の方々がたくさんおられますが、なかでも最も有名な人物となると、やはり植村直己さんではないでしょうか。植村さんといえば、日本人として初めてエベレストの登頂に成功し、世界で初めて五大陸すべての最高峰を制覇、さらに北極圏12,000km犬ゾリ単独行を成功させました。残念ながら厳冬期のマッキンリーへの単独登頂成功後に行方不明となられましたが、いまだに多くの登山家や冒険家達に影響を与え続けている方です。

私が、植村直己さんに興味を持つきっかけとなったのは、植村さん自身が書かれた1冊の本を読んでからの事です。「青春を山に賭けて」というその本は、40年前に初版が発行されてから、いまだに売れ続けている超ロングセラーな人気の本です。本の中身はといいますと、数々の冒険の過程を植村さん自身が綴った回想録で、脚色や誇張の無いそのまんまの植村さんの言葉で綴られています。まさにええかっこなしです(笑)冒険の記録とはいうものの、この本には映画の主人公のような格好のいい武勇伝はあまり登場しません。実際には植村さんにしかできないようなすごい事であっても植村さん自身がそういった風には語らないわけです。

例えばエベレスト登頂に成功したときの話、この時の植村さんは、登頂隊に参加するにあたっての自己負担金が用意できず、後方支援者としての参加となったのですが、最終的にはアタック隊に選出され山頂を目指すことになります。この時植村さんは、自己負担金も納めていない自分が選ばれるなんて、他のメンバーの皆さんに本当に申し訳ないと感じていたそうです。そして、日本人として初めてのエベレスト山頂まであと10mとなった時点、2人だけのアタック隊で前を歩いていた植村さんはここで足を止めます。そして、後ろを歩く先輩に「どうぞ先に行って下さい」と声をかけます。自己負担金も払わずにいわば登頂隊に便乗させてもらっている自分が先に頂上を踏むなんて皆さんに申し訳がないとの思いから、先輩に日本人として初となる快挙を譲ろうとしたのです。結局、2人は肩を組んで同時に山頂に到達するのですが、今度はここに来られなかった仲間のためにと、持ちきれないほどの数の山頂の石をリュックに詰め込み、高価なビデオカメラを山頂に残して下山したそうです。極限の場所にいながらも植村さんの仲間を思う優しさや、気遣いが現れている大好きなエピソードです。

先日観たビデオの中での植村さんがこんな事をつぶやいていました。
「なんでこんなに辛いことしなくちゃいけないんだろうなぁ・・・ ここまでしないと満足できないのかなぁ・・・ 俺の人生なんなんだろうなぁ・・・」
数々の偉業を達成してもなお、偉ぶることや自分を誇張することなく、等身大の自分として生きられた植村さんは、私にとっては英雄です。

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